マタンゴ [変身物]

マタンゴ(1963年 東宝)

原案 星新一 福島正美

監督 本多猪四朗 脚本 木村武

出演
 久保明 小泉博 佐原健二 太刀川寛 土屋嘉男
 水野久美 八代美紀 天本英世(マタンゴ)

◆・ストーリー

 社会的地位に恵まれるか、それなりに生活に不自由していない若い男女7人が
豪華ヨットで遊びに出たが、無謀な判断の結果、暴風雨に巻き込まれて遭難する。
漂着した場所は船の墓場のような島で、日本よりも赤道に近い南の無人島という
設定である。
 一行は難破船を発見したものの、「正体不明の実験船」であり、ハッキリ判った
のは、「マタンゴ」という名前のキノコを食べてはいけないという事だけだった。
 しかし、絶望的な環境の中で、人間性やモラルが崩壊していき、飢えに耐え切れ
ず、キノコを食べて次々と化け物に変身していく。
 そして、ただ一人奇跡的に脱出に成功した大学助教授・村井(久保明)も、
キチガイ扱いされて精神病院に収容されてしまい、やはり彼もまた、キノコを食べて
いたという悲しいラストで終わる。

◆・レビュー

 捜索隊が来る可能性が無く、食糧が底を尽き、キノコの化け物の襲撃という恐怖の中、
生きる希望もないという極限状況の中で、一人一人が次々にエゴイズムを剥き出しに
していき、本能的な行動に出てしまう。そして相互の信頼感や理性が失われていく。
 SF映画というよりも、ホラー映画の要素が強く、人間が完全にキノコに変身した姿より
、変身していく途中の姿が不気味である。

 餓死するか、キノコを食べてマタンゴになるかという二者選択を迫られていくしかない
絶望的な状況の中で、人間はどうなるか、どのような行動を選択するのか、人間らしく
生きる事が可能なのかという問いかけが行われている、また意志の強さと倫理・道徳感
を維持するのが非常に困難になるだろうという点も示唆している。そういう点で単なる
SFやホラーの枠を超えた作品として高く評価したい。

 常に理性的でエゴを出さずに皆のために振舞っているような人物作田艇長(小泉博)が
、実は一番身勝手で、自分だけが助かるためにヨットを修理して、残された食べ物を強奪
して一人で逃げ出すという展開が素晴らしい。本当の悪人というのは、常に善人面して
本心を表面に出さないという事を教えてくれる。


 水野久美の妖艶な美しさは特筆すべきものであり、こんな女性に誘われたら一緒に
キノコを食べてしまうという男性も居るはずだし、計算高くて変わり身が早く自己中心的
という、女性の嫌な一面を見事に表現している。
 佐原健二が、夜でも、暴風雨の中でも、起きてる時は、いつもサングラスを掛けていて、
育ちの良いボンボンばかりの中で、野性的な荒くれ男を演じているのが印象的だ。

 なお、この映画の続編の展開という形で「マタンゴの逆襲」
吉村達也著(角川ホラー文庫)が出ているのだが、これは、未来を舞台にした更に
スケールが大きい内容になっている 連続性があるので、映画を見てから、続編の本を
読んだ方が話の展開が判るので、放送を録画するか、DVDを買うか借りる事をお勧める。
そして、こちらの方も是非、映画化してほしいものだ。


★・点数90点
nice!(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

トラックバック 0

電送人間美女と液体人間 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。