海底軍艦 [科学]

◆・海底軍艦」(1963年東宝)

 
監督 本多猪四朗 特撮 円谷英二  脚本 関沢新一  原作 押川春浪

出演
高島忠雄 佐原健二 藤木悠 上原謙 田崎潤 平田昭彦 小泉博 天本英世
藤山陽子 小林哲子 北あけみ


◆ストーリー

 旗中(高島忠夫)西部(藤木悠)達が、岸壁でモデル(北あけみ)写真の撮影中に、
海中から蒸気人間のような人物が上がってくる。間もなくタクシーが海中に飛び込む。
ムウ帝国工作員を名乗る謎の人物(佐原健二)に元海軍技術将校だった楠見(上原謙)
と、神宮寺大佐(田崎潤)の一人娘(藤山陽子)が誘拐されそうになる。

 12000年前に滅びたはずのムウ帝国が海底の地下深くに存在していたのだ。
それら一連の不思議な事件は、ムウ帝国による世界侵略の始まりだった。
彼らの進歩した科学力に対抗出来るのは、終戦末期に行方不明となった「イ403潜」
艦長の神宮寺大佐が、南方の孤島で秘密裏に建造した海底軍艦「轟天号」だけだった。
生粋の軍人の神宮寺大佐は「轟天号」は日本復活の為にあるとして、出撃を拒んだが、
娘の涙を見て出撃を決意し、ムウ帝国との戦いに臨む。


◆・レビュー

 原作が何と1900年である。そしてこの作品が制作されたのが1963年。
素晴らしいアイデアと企画力と特撮技術に敬意を表したい。

ムウ帝国の守護神の怪獣「マンダ」は、おまけみたいなもので、ハッキリ言って
どうでもよい。主役は海底軍艦「轟天号」である。陸上・地中・海上・海中・空中と
、縦横無尽に行動可能な「軍艦」だ。
映画の中では性能に関しては、あまり詳細に触れていない為に、全てが紹介されて
いるわけではないが、軍事機密と思えば納得できる。これが間に合っていれば太平洋
戦争に勝っていただろうと思えるほど凄い代物だ。また現代においても、竹島奪還
、尖閣諸島の防衛も十分に可能と思われる。神宮寺大佐ならずとも、日本海軍の為に
使いたい、世界を変えて見せると豪語する気持ちはよく理解できる。

そして登場人物で最も注目する人間は、高島忠雄や平田昭彦でも田崎潤でもない。
藤山陽子でもない。やはり教師(青春とはなんだ)か、社長令嬢(大学の若大将)
の方が向いている。
ムウ帝国皇帝(女帝)役の、小林哲子の妖艶な美しさと高貴な雰囲気と生意気な
態度が一番印象的なのだ。あの眼つき、キリッと締まった口元から発信される自信に
満ちた御言葉に、上から目線の態度からは、傲慢だが上品さも感じさせてくれる。

≪世の中は全部私の為にある。全部、自分の思いどおりに動くんだ≫

と信じ込んでる姿が全面に出ている。かつては全世界を植民地にしていた帝国の
女帝らしいプライドの高さが素晴らしい。
 
 本当にどこかのSMクラブにこのような女王様は居るだろうか?
もし居たら、ぜひ一度はお世話になりたいと思った人も居るのではなかろうか。
それも衣装は、レザーではなくて皇帝の衣装で出てきてほしいものだ。
1941年生まれ、1994年没という事は53歳の若さで他界した事になる。
本当に悔やまれる。

 この作品もまた他の作品同様に戦争の傷跡が残っていて、
自由と権利が誤って解釈されている時代背景が出ていて興味深い。
神宮寺大佐の愛国思想を「錆びついた亡霊」とか、世界を変えて見せる発言には
「戦争キチガイ」「海底軍艦はキチガイに刃物」等と酷評したり、佐原健二扮する
怪しげなフリーランスのライターを現地まで連れて行ってしまう。
残していたら色々と描かれる危険性があるというが、世界全体の危機的状況なの
だから、必要な日数まで身柄を拘束&隔離すれば良いだけだ。個人の権利や報道の
自由等よりも世界の安全が優先されるのは当たり前なのだから。

  ムウ帝国の内部と人物も非常に面白い
マンダの踊りは、インファント島のモスラの踊りの変形みたいな感じだし、地中で
暖かいという設定とはいえ、地上よりも科学が進化している文明なのに、怪獣を
神と崇めたり、まるで南方のジャングルの部族のような衣装と、槍やナイフの武装
という前時代的な武器形態に過ぎないのに、原潜をはるかに上回る能力の潜水艦を
保有してるのだ。未開文明と超科学が同居しており、そのアンバランスさは、極めて
異様な社会と言わざるを得ない。
 また彼らは間違いなく水泳の達人である。ムウ帝国工作員23号(平田昭彦)が
「サングラス」「マフラー」「スーツ」着用のまま海に飛び込んで逃げるのだから、
地上の人間と比べて並はずれた水泳の能力があるに違いない。

★・点数 100点

nice!(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。