怪奇大作戦 第25話「京都買います」 [怪奇大作戦]

◆・第25話「京都買います」

監督 実相寺昭雄  脚本 佐々木守 特撮 大木淳

出演 岸田森  勝呂誉 松山省二 原保美 小橋玲子 小林昭二
ゲスト出演 斎藤チヤ子 岩田直二 

◆・ストーリー

 京都で仏像が消失する事件が発覚。すべて考古学の権威、藤森教授が研究していた
物だった。調査にあたった牧は、助手の須藤美弥子(斎藤チヤ子)に一目ぼれするが、
「仏像の美しさを判らない人たちから京都の街を買ってしまいたい」と話すほど仏像を
愛する女性だった。
牧は、消失する仏像の周辺には、いつも美弥子と僧侶グループの姿があった事に
気がつき行動を観察した結果、彼女がとり付けた発信機を発見して計画を挫折させる
決定的な働きをすると同時に彼女を裏切ることになる。

◆・レビュー

 牧史郎役の岸田森の白熱した演技が見もので完全に役になりきっているとしか
見えない。美弥子への恋愛感情と信頼関係の板挟みにあい悩みつつも、職務を遂行
する苦悩と悲壮感を漂わす演技は、「怪奇大作戦」の作品中、全ての出演者の中で、
もっとも印象に残るのではないか。それほど他を圧倒する演技を見せてくれる。
涙をボロボロと流したり、ハイテンションで叫ばなくとも、その深い悲しみと辛さは
表現出来るし、観る者の心底に伝わってくる事を教えてくれる。

立場上、犯罪を解決し犯人を逮捕しなければいけないが、愛する女性を裏切ること
になるのだから、苦渋の決断を迫られるわけで、深い悲しみと無力感が心を支配する
し、自分が過ごした人生の中で永遠に記憶されるに違いない。
こういう体験は、その後の生き方や行動や思考に大きな影響を与える。

美弥子に一目惚れする時。発見した発信機を皆に見せる時、そして美弥子との決別の時、
その都度、岸田森によって「言葉を必要としない」表現力の豊かさと演技の凄さが
十二分に発揮された作品だと思う。故人になってしまったのが本当に惜しまれる。

「仏像の良さが判る人だけの街にしたい」
本当に仏像が好きで魅入られた人には、そのような願望があっても不思議ではない。
教授が逮捕された後、牧に「仏像以外の物を信じようとした私が間違っていました」
と言って去っていく美弥子に、計り知れない心の傷の深さを感じる。実は彼女も牧に
心を許し恋愛感情を持っていたのがうかがい知れる。裏切られたという気持ちと虚しさで、
心にポッカリと穴が空いてしまったのだ。それは怒りの感情ではなく強い虚無感となる。
牧と同様に彼女もまた人生の中で転機となる程に大きな衝撃を受けたのだ。

ほとぼりが冷めて冬の京都の寺を訪れた牧の前に「尼宗」になった美弥子が現れ
語りかけるが、目を離した隙に、美弥子そっくりの仏像に変身してしまう。
美弥子に会いたいと願う牧の願望が幻覚と幻聴を生んだのか、涙を流す仏像が美弥子
の化身だったのかは定かではない。悲しいが怪奇大作戦らしい結末である。

この25回は、サスペンス劇であり、悲恋ドラマであり、人間ドラマなのである。
そのいずれの要素もバランス良く兼ね備えた素晴らしい作品になっている。

美弥子役の「斎藤ツヤ子」は、アナウンサーの内田恭子に似た顔立ちで凄く可愛い事
を記録しておきたい。

★・点数 100点


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