ゴジラ [怪獣]

ゴジラ(1954年東宝)

監督 本多猪四朗   脚本 村田武雄  原作 香山滋
特撮 円谷英二    音楽 伊福部昭

出演
宝田明  志村喬 平田昭彦 河内桃子 堺左千夫 菅井きん

賛助
海上保安庁 

◆ストーリー

 日本近海で船舶の謎の遭難事故が続発する。事故のカギを握るのは大戸島に伝わる
ゴジラ伝説であった。そのゴジラは水爆実験の放射能を受けた影響で凶暴化しており、
やがて東京に上陸して暴れまわり焦土と化してしまう。強力で凶暴化したゴジラの前には、
人類が保有している通常の兵器は全く効果が無く、若き天才、芹沢博士(平田昭彦)が
研究開発したオキシオンデストロイヤーだけが頼みの綱であった。
 自分の研究が世界に公表される事で戦争の兵器として悪用されるのを恐れる芹沢博士は
使用を拒んだが、犠牲者の悲惨な状況を知ると説得に応じ、悲壮な決意の下に東京湾に
潜むゴジラに対して使用する。



◆・レビュー

 オープニングのゴジラの吠える声、ド~ン!ド~ン!というゴジラの足音を表現する
太鼓の音、そして伊福部昭の作曲した独特のテンポのBGMは、抜群の音響効果で
ある。これから何が起こるのか、どんな映像が出てくるのか。いやでも胸がワクワクして
くるではないか。

 液体中の酸素を破壊し、生物を窒息死させて液状するというアイデアは素晴らしいし、
発明者であり、調査隊の船を見送りに現れる時の、黒の眼帯にサングラス姿の平田昭彦は
渋くてカッコ良く、世間から隠蔽生活を送っている孤高の天才科学者というイメージがピッタリ
である。絶対にマッドサイエンティストではないのだ。
 発明&研究は危険な破壊兵器になるかもしれないが、けっして狂気を秘めた科学者では
なくて、研究が公になり兵器として使用されたら困るし、阻止する為の決断が出来るのだから、
正常な判断力と分別の持ち主といえよう。

 海上保安庁を海上保安隊、自衛隊を防衛隊と呼ぶのは、戦争や軍事アレルギーが支配的
だった1954年当時の世相を反映したものだが、やはり異様な感じを受ける。
 そもそも、正真正銘の軍隊なのに自衛隊という名称さえ不自然なのだから。
なお、爆雷攻撃のシーンは、海自のフリゲート艦による爆雷攻撃の演習シーンのニュース映像
のフィルムを転用したと思われる。

 また山根博士(志村喬)の動物愛護のヒューマニズムと水爆アレルギーもまた異常である。
ゴジラを野放しにしたら、強靭な生命力を研究して解明するよりも、人類が絶滅させられてしまう
方が早いと思う。ゴジラは罪のない多数の一般庶民を情け容赦なく踏み潰し、焼き殺したのに、
動物愛護優先とは明らかに狂っており、常軌を逸しているとしか思えず、水爆実験が続いたら
同類が現れるかもという思考に至っては、笑止千万!被害妄想や強迫観念に捉われている
精神疾患の疑いを感じるのだ。
芹沢博士ではなく、山根博士の方こそマッドサイエンティスト⇒【キチガイ科学者】と呼ぶべきだ。
 このような思考パターンが受け入れられてしまうのが、日本人の間に、エセヒューマニズムが
育まれ、戦争や原子力エネルギー利用にたいして特異なアレルギー反応を示す異様な国民性の
形成にもなっている。

 山根博士が、放射能で汚染されている三葉虫を直接手掴みで採取するが、普通は調査隊って
初めから手袋を用意してるはずだが、高名な科学者は特別平気なのだろうか。
 空自のF86Fセイバーのロケット弾攻撃は至近距離から発射してるのに、1発も命中しない。
命中したら都合の悪い事があるのだろうか?
 船上からのガイガーカウンターの計測でゴジラの潜んでいる場所が分かってしまうなんて、
恐ろしく高性能なガイガーカウンターなのか、あるいは放射能の量が多いに違いないのだが、
それじゃ~放射能汚染で東京湾の魚介類は食べられくなっちゃうだろうし遊泳禁止になるんだろう
なと、そちらの方の心配をしてしまう。

 こんな具合に突っ込みどころが満載なのだが、それでも素晴らしい作品になっている。
ゴジラシリーズ全作品の中で、特撮技術がまだまだ未熟にも関わらず、この第1作がもっとも
見応えがあり内容が濃い仕上がりになっているのが、SFや怪獣映画の本質を教えてくれている。
派手な爆破や格闘シーンよりも、優秀な脚本と効果的な音楽、そして監督の手腕の重要性と、
何よりも大人を対象にする制作のスタンスがいかに重要かが判る。

 ゴジラ作品は初期の物を除いて、大半が子供向けの内容になってしまい、平成に復活した物は
ゴジラをスーパースター扱いするあまり、荒唐無稽な存在と行動が失笑を買うような作品になって
しまったのに対して、この第1作は今改めて見直しても大人の鑑賞に耐えうる素晴らしい作品に
なっている。ゴジラの動きがゆっくりで、ぎこちないのが、逆にリアルさと恐怖を感じさせてくれる
点で、むしろ効果的になっている点に注目したい。

★・点数 90点

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