ウルトラQ・初めに [ウルトラQ]

ウルトラQ(1966年)
◆・初めに

 海外のSFドラマを意識した作りでありながら、子供向けのテレビ番組という触れ込み
で軽く見られそうだが、日本初のテレビ用の本格的な空想特撮作品として大きな夢と
期待を集めた中で始まった番組である。ウルトラQが成功した結果、その後の様々な
SF作品の隆盛がもたらされたといっても過言ではないだろう。
 子供向けでありながら、意外とシリアスな物語が中心で、時として難解な物もあり、
科学教育ドラマのような一面もあったが、その一方でコミカルな物語が程良く散りばめら
れている。

 ウルトラQと聞いて誰もが最初に連想するのが、番組冒頭の回転して現れる奇妙な
タイトルロゴと不安を掻き立てるようなBGMである。少し斬新すぎるきらいはあったが
、タイトルロゴ自体がアンバランスな世界を象徴しているようでもあり、一度聴いたら
耳に残るBGMだった。そしてナレーターの石坂浩二の独特の語り口とテンポで、
まるで諭したり説いたりするような語りかけが印象的だった。

 テレビを見ている者は、バランスが崩れた不思議な世界、アンバランスゾーンの中に
引き込まれていく。そこは通常の日常生活とは異なる別次元の世界だ。
お茶の間に居ながら奇妙で不思議な世界と時間を体験できる。子供達にとっては夢の
世界であり、無限の可能性が拡がる未来への希望だったのかもしれない。
 
 ウルトラQの特徴は、摩訶不思議な事件を、人類を超越したスーパーヒーローではなく
、人間が知恵と行動力を活かして問題を解決していくのが見所である。
 街並みや船舶や航空機など、ハッキリ、ミニチュアやセットと判るがバカには出来ない。
まだCGが無かった当時としては、随分と精巧に作られており最高レベルの技術なのだ。
このような技術とアイデアと努力を積み重ねて今現在があると思ってほしい。
また生物や植物が巨大化するのに、原爆や水爆実験の放射能の影響を受けた結果という
日本SF映画における定番のようなお題目を使わなかっ点も良かった。

 惜しむらくは30分番組という時間的な制約があった事ではなかろうか。
あまりに短い為に、ストーリー展開が早急で短絡的で説明不足になってしまったのが残念で、
1時間番組ならばもっと充実した映画顔負けの作品になっていたと思われる。
 
 ただ残念だったのがレギュラーの二人、万城目淳(佐原健二)と戸川一平(西條康彦)の
職業設定に大きなミスを犯した事だ。
 万丈目淳と助手の戸川一平は、全ての民間や公共の関係機関から越権行為が黙認され、
各種特権が与えられた存在としか思えないような行動形態と発言力を保持している。
会社の制服と帽子を着用しているのだから勤務時間中と思われるが、日祭日、平日を問わず
、早朝から深夜まで、あちこちの事件や事故現場に姿を現し積極的に首を突っ込み、
身分証明書や記者証や取材許可証も提示せずに何処でも入っていける。
その上、その振る舞いと言動は、どう見ても民間航空会社のパイロットと助手ではなくて、
政府や警察の特殊なセクションに所属している人物にしか見えないのだ。
 さらに付け加えれば、科学特捜隊やウルトラ警備隊はまだ設立されていない時代だったので
隊員でもない。
 企画段階でプロデューサーが、脚本段階でシナリオライターが、制作段階で現場スタッフが
気づいて修正しない現実の方が「アンバランス」な世界のように感じる。

一の谷博士もスーパー科学者とでも形容したい人物で、あらゆる分野に精通しているのも凄い。
この人の本当の専門分野は何なのだろうという興味も湧いてくる。

1966年の制作から44年経った今、ウルトラQ全作品をあらためて見直すと、子供時代と大人に
なってからでは、感じ方も評価もかなり異なっているのだが、何度も再放送されて大勢の人に見ら
れて、各々の感動と共鳴と想い出と共に、SF特撮史上、忘れる事の出来ない名作として後世に
語り伝えられていく事であろう。

◆・配役、レギュラー&準レギュラー

万城目淳 (佐原健二)星川航空パイロット
戸川一平 (西條康彦)助手
江戸川由利子(桜井浩子)毎日新報カメラマン

一の谷博士 (江川宇礼雄)
毎日新報デスク (田島義文)


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