妖星ゴラス [科学]

妖星ゴラス(1962年東宝)

監督 本多猪四朗 特撮 円谷英二 脚本 木村武 原案 丘見丈二郎

出演 上原謙 志村喬 池部良 久保昭 水野久美 白川由美 佐原健二
田崎潤 西村晃 太刀川寛 平田昭彦 ジョージ・ファーネス


◆・ストーリー

 土星探査に向かった日本のロケット「隼号」が、太陽系目指して向かってくる
地球の6000倍の質量を持つ妖星ゴラスの調査に向かうが吸収されてしまう。
収集されたデータによれば、ゴラスがこのまま進むと確実に地球と衝突する公算が
決定的と判明した。国連の科学委員会は南極大陸に原子力ジェットパイプを
大量に設置し、軌道から地球を動かしてゴラスとの衝突を避けるという計画で
危機から逃れようと試みる。「南極計画」である。この計画は成功すると思われたが、
突然、怪獣が現れて施設の破壊を行う。



◆・レビュー

 東宝が、「地球防衛軍」から5年、「宇宙大戦争」から3年を経て、1962年に制作
したのがこの「妖星ゴラス」である。

空想科学映画関連の作品としての成熟度が増した出来栄えとなっている。
南極大陸に巨大なジェットパイプを作り地球を動かして軌道を変更する。
土星の輪がゴラスに引き寄せられたりとか。まさに「空想科学映画」といえる
アイデアや描写がふんだんに描かれている。日本映画史上かつて無いほどの
壮大なテーマの作品として映画史に残る程の名作になるはずだった。
 順調に進んでいた南極計画の遂行だが故障や不測の事態による危険を演出する為に
怪獣の出現を使うという子供だましの発想はいただけない。空想科学映画だが、怪獣や
チンケな宇宙人が現れないで物語が進行して、緊迫感と想像力を膨らませて観ている時に
、情けない哀れな怪獣が登場では、シラケてしまうではないか。
おかげで秀逸な内容の作品を見事なまでにぶち壊してしまったのだ。

「隼号」は土星探査の目的で出発しているのだから、燃料や研究機器や資材は、
その為に必要な最低限度の物しかないはずだ。当然の事だが、航路も速度も作業手順も
予め計算されている。したがって予定航路を大幅に変更するなど絶対に有り得ず、ゴラス
調査は目的逸脱の行動であって、しかも質量の大きさは事前に判っているのだから、
脱出不可能な距離まで吸い寄せられた点も含めて、艇長(田崎潤)の判断ミスは極めて重大
である。危険を犯した事で貴重なデータが収集できたというのは結果論であって、乗員の生命
の安全や、莫大な国家予算が投入されたという自覚が無い。

 国連の科学委員会も、普通ならば付近のロケットは危険だから近寄らないように指令を
出すべきであって、資料収集の為の協力依頼も、無謀な冒険や危険を避けるように要請
するのが筋ではないか。この目的自体を土星探査ではなくて、初めからゴラス調査の目的
で出発という設定にした方が良かったのだ。こういう点で映画もテレビも日本の場合は、
こじ付けや無理な設定がされてしまっている傾向があるのはなぜだろう。

 冒頭で水野久美と白川由美の二人が水着なしで裸で泳ごうという事で衣服を脱ごうとする
寸前でロケット発射の閃光と轟音で中止するのが非常に残念だ。二人が裸になって海岸に
出た所が良いが、せめて下着姿になった所で発射してほしかった。水野久美の入浴シーンが
あるのだから、それくらいサービスしても良かったのではないか。

 宇宙省」や「富士山麓宇宙港」が存在するというのも近未来的な発想で面白いし、国連の
会議で「同時通訳」の設備が導入されているのも、日本語が公用語だったそれまでの空想科学
映画とは異なるし、テレビ電話が利用されているのも当時としては斬新だったのかもしれない。
富士山麓のロケット発射基地、南極計画、押し寄せる海水と、いずれもセットの出来と合成の
特撮技術は当時としては最高の出来栄えで必見である。



点数・70点(無理な設定と怪獣の登場が無ければ85点)
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