エコエコアザラク(劇場版)Ⅰ [エコエコアザラク]

★・エコエコアザラク(1995年)

監督 佐藤嗣麻子 脚本 武上純希 音楽 片倉三起也 原作 古賀新一

出演
吉野公佳 菅野美穂 高木澪 周摩 角松かのり 高橋正純 岡村洋一

◆・ストーリー

 猟奇的な殺人事件が続発し、発生場所を線で結ぶと五合星となる。
黒井ミサ(吉野公佳)はその中心にある高校へ転校してきた。その高校には、レスビアンの
女性教師(高木澪)や魔術に興味がある男子生徒・水野(高橋正純)などの怪しい人物が
在籍していた。何者かによって能力を封印されたミサは、学校内に結界を張られ、追試テスト
に残された生徒達と共に閉じ込められてしまう。
 全ては大魔王「ルシファー」を呼び出し、その強大な力を手に入れて世界を支配しようと
目論む人物の仕業だった。
ルシファーの召喚に必要な「血で作った五合星と若い13人の生贄」の為に、満月の夜、
学校に閉じ込められた12人のクラスメートは次々と無残に殺されてゆきミサが最後に残る。

◆・レビュー

 冒頭の、何かに追われて逃げる女性が、落下した鉄骨で頭を潰されて惨殺されるシーンは
相当ショッキングで、ホラー映画としてかなり期待できる予感がするのだが―――――

 魔術を封印されたミサは、その能力を発揮できずに、クラス委員倉橋(菅野美穂)の
自滅によって事件は解決する。つまり他力本願で生き残ったようなもので、実質的には、
ほとんど役に立っていないといえよう。
『魔術を悪い事に使おうとする人から守るために学校へ来た』はずなのに誰も守れず、
取り乱してパニックになったり、全く頼りにならない存在である。魔術の引き出しも極端
に少なく、自分を守る事すらおぼつかず、これでは他人を守るなどおこがましい。
一体、何のために転校してきたのだろうか?という疑問を感じざるを得ない。

 全体を通して気になるのが、主役は「黒井ミサ」のはずなのに、このように精神的に弱い
女子高生の設定と演技表現やセリフの言い回しで、非常に物足りなさを感じる事だ。
周囲を固める教師や同級生達の演技に救われている。

 主役のミサ役の吉野公佳よりもクラス委員「倉橋」役の菅野美穂の方が、観ている人に
対して遥かに強いインパクトを与える。正体を現してからの演技と雰囲気は好演や怪演と
いうよりも狂演といえる。(「催眠」ほどではないが)特にあのバカ笑いは印象に残る。
一言でいえば、強大な魔術の力を獲得して世界を支配したい願望に取りつかれた、
誇大妄想のウルトラキチガイ少女なのだ。
菅野美穂は、この作品で、ジャパニーズホラークイーンと称されるような演技の生き吹きを
見せており、完全に主役を食っている。

 この作品からは、分相応の大切さを学ぶ事が出来る。
並はずれた特別な能力を持たない人間が、神によって授けられた収容力をはるかに上回る
超自然的なパワーとエネルギーを吸収するのは不可能なのだ。エコエコアザラクの全作品
の根底に流れている、「ミサは誰も守れなかった」という宿命的な運命が、この第1作から
明確に教示されており、「行く先々で人が死ぬ」という負のイメージの連動性もまた同様だ。
学校を舞台にして様々な趣向を凝らした殺し方、それもオカルト的な方法を示せた点は、
秀逸な演出として評価したい。

ラスト、ミサは緑の木々の下を「エコエコアザラク」と呟きながら去っていく。
悲しげなテーマ曲が作品の雰囲気とピッタリと合っている。

★・点数80点(菅野美穂を評価しての点数)
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