エコエコアザラク（劇場版） Ⅲ

★・エコエコアザラクⅢ
「ＭＩＳＡ　ＴＨＥ　ＤＡＲＫ　ＡＮＧＥＬ」（１９９８年）
（東京国際ファンタスチック映画祭９７・正式参加作品）
　
監督　上野勝　脚本・監修　梶研吾　脚本　七月鏡一　林荘太郎　原作　古賀新一

特殊メイク　原口智生

出演
佐伯日菜子　七海彩夏　　萩原由紀　高橋あゆみ　三輪ひとみ　藤村ちか　山本エレナ
滝村裕子　梅津栄　趙方豪
主題歌
『すべての出逢いと別れに』（歌：FANATIC◇CRISIS）

協力　西麻布バーチ（イタリアンレストラン）　埼玉県宮代町コミュニティーセンター
　　　進修館　十仁病院　　平成国際大学　　

◆・ストーリー

　突然、横断歩道に凄惨な焼死体が出現する奇怪な事件が起こった。
現場には「幻夢境の魔術師」という台本が残されていた。
その事件の解決の鍵が聖セイレム学園の演劇部にあると睨んだミサは、転入して演劇部に
入部し合宿に参加する。
　合宿はオカルト好きの学園創始者の不気味な洋館「江取記念館」で行われるが、
部員全員が合宿の最中に何者かによって異空間の世界に飛ばされてしまう。
実はそれは初めから仕組まれたものであり、人間になりたいと願うホムンクルスの魔術師に
より邪悪な陰謀が企てられていたのだ。自分達が生贄にされる事を知らない少女たちは、
恐怖の中で一人また一人と惨殺され死体になっていく。
企みに気づいたミサだが、時すでに遅く自らも生贄にされてしまう。

◆・レビュー

　この第３作は吉野公佳ではなく、テレビ版でお馴染みとなった「佐伯日菜子」が
黒井ミサを演じている。前２作と大きく異なっているのは、黒井ミサが名実ともに主役
として位置づけられている事だ。また、監督が「上野勝仁」脚本に「七月鏡一」「林荘太郎」
更に脚本監修に「梶研吾」と、これまたテレビ版でもお馴染みのスタッフの組み合わせと
なっており、さらにミサの伯父さん（趙方豪）も登場し、テレビ版を見慣れている人には違
和感を感じず、すんなりと物語に入っていける構成となっている。また他のホラー作品でも
個性的な演技で存在感を発揮している「三輪ひとみ」（水島真実役）「藤村ちか」
（火野陽子役）が演劇部員の役で熱演している。
　それに加えて、昔のサスペンスドラマで怖い悪役をこなす事が多かった「梅津栄」が、
人の良さそうな管理人の老人役を明るく楽しそうにこなしているのが微笑ましく感じる。

　なおかつ、黒井ミサの存在は、すでに都市伝説となっており、状況設定もテレビ版と
連動しており安心して観ていられる。劇場版の第１＆２作をベースにしなかった事、特に、
吉野公佳の演じた気弱な黒井ミサ像が継承されなかったのが幸いであった。

そして、いつも「誰も助けられない」ミサが、この作品では数少ない例外とでもいえる
「一人の純粋無垢な少女」木下亜夜（七海彩夏）を助ける事が出来るのが他の作品とは
異なっている。ホムンクルス（萩原由紀）の人間になりたいという強い願望は叶えさせて
あげたいという気持ちにもなるが、ミサが、「所詮は出来損ない」と一蹴してしまうのが
愉快だ。喜怒哀楽の感情を持たないホムンクルスが、本物の感情を手に入れる為に思春
期の傷ついた少女６人分の魂が必要とされている。確かに自分の願望の為に罪のない。

　女たちを惨殺して生贄にするなど、正常な神経を持った人間には出来ない。
それでは人間に成るのは失格の烙印を押されたようなものなのだ。
「やはり所詮は出来損ない」なのであろう。

　人間ではない者（ここでは人工的に作られた異質な存在）が、人間になりたいという
強い願望と、その為には手段を選ばずという恐るべき執念に対して、ミサの行動と言動は
自然の生命の秩序とバランスを乱すのを阻止すると同時に、それぞれの置かれた場所が
あり、そこから抜け出す事は難しく、闇の世界の住人であっても万能ではない事を教えて
くれる。
　劇場版１・２作と異なり、テレビ版からの継承～発展ならば、ミサは魔女として実績と能力
が十分に評価されている存在なのだから、それなりの使命を果たす運命にあるのだ。
　大人になる前のあどけない少女達の、各々の過去の苦い体験の回想シーンが入るが、
殺され方も、それらの因果応報のような死に様となるのは、不気味でおどろおどろしい描写と
共に、オカルト的な構成として評価したい。また少女達が高校の演劇部員役を、それらしく
演じているのも好感が持てる。初々しさと生々しさが、リアリズムと生活感を与えてくれる。
非常に残念なのが全体的に画像が暗い為に観づらい事か。正直言って眼が疲れるので
注意してほしい。

★・点数・９０点

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