エコエコアザラク (劇場版) Ⅳ [エコエコアザラク]

◆・エコエコアザラク4 (2001年東映)

監督 鈴木浩介  脚本 小林弘則 音楽 北里礼二  笠松広司
出演 加藤夏希  光石 研  遠藤憲一  大谷みずほ 諏訪太朗 
    小島一慶  高野八誠  曽根英樹  沖田寛治

協力  杏林大学  埼玉女子短大
 

◆・ストーリー

 森の中で「悪魔の殺人儀式」とでも形容したい5人の男女の凄惨な死体が発見される。
生存者は少女(黒井ミサ=加藤夏希)ただ一人で、記憶障害を起こしていた。
遺留品は犯行に使われたと思われる不気味なナイフ1本だけだった。
 ミサは病院に収容されたが抜け出し、理解者である親友の仁美(大谷みずほ)達と学校へ
、そして自分の偽物が出演しているテレビ局へと向かう。
 ミサを魔女ときめつけて暴走したワイドショーのスタッフ(遠藤憲一)が生放送の中で記憶を
取り戻させて魔術を使わせようと挑発した事で、ついに記憶を取り戻し極限状態となったミサは
行動に出る。

★・レビュー

 幻想的な映像と、神秘的なBGM、宗教的な神聖な儀式を連想させるような雰囲気の
描写で物語は始まる。そして黒井ミサ役を演じた加藤夏希のビジュアルクイーンの形容に
相応しい清楚な雰囲気と美しさが、より神秘性を高める上で効果的である。
 一見、修羅場には似つかわしくないイメージだが、彼女が「エコエコアザラク」と呟くと、
恐怖と殺戮が、その場の空間を包み込んでしまう。そのギャップが快感である。

 セーラー服の女子高生が学園を舞台に悪魔と戦うというストーリー展開ではない。
ホラードラマというよりも、社会派ドラマのようなテーマが描かれている。
 皆と違う異質な者、しかも魔術を使える存在、それに対する恐怖心が、差別と偏見を
生み迫害へと進む。社会正義や公器等と奇麗事を言いながら、視聴率獲得の為には
倫理道徳や人権を無視して事件を煽り、なおかつ特権が与えられているかのように
振舞うテレビ局=マスコミの暴走、さらには社会全体にストレスと不満が鬱積し蔓延した
現代日本の社会状況への警鐘となっている。

 魔女なんか居るはずがない。しかし、もし居たらテレビに出せばスクープになるから、
捏造や偽証を行う。その結果、どのような非人道的な出来事が起こり悲劇的な運命を
招くかなど全く顧みない。そのようなテレビ関係者達が情け容赦なく虐殺されていく様子
を想像すると気分爽快になる。出来れば、スタジオ内の壁や天井に血飛沫が飛び散り、
床一面が血の海になり、バラバラ、グシャグシャになった死体が転がる。
そういった凄惨な描写が欲しかった。それはエコエコアザラクの原点ともいえよう。

 また「一人の人間が別の場所に同時に現れるなど不可能だから「魔女の証拠」
という教師の言葉で教室中がパニックになる。冷静に考えれば対処可能なのに、教室全体
が集団ヒステリー状態になってしまう。テレビが全て本当の事を伝えているとは限らないの
だから、番組の中身に疑問を持つべきなのだ。まるで「3:11」東日本巨大地震直後の東京
での買い占め騒動、福島原発の風評被害や奇妙な放射能防護対策が流布したのと共通の
物を感じる。

 テレビスタジオ内で38名が惨殺されるが、「超常現象や魔術を法律では罰せない」
「法廷では立証できないから、法律では裁けない。裁かれる事のない罪は、罪にならない」
という解説がされる。ミサと魔術は人間社会の規律や規範を超えた現象であり、超法規的
存在ということになる。

 ミサはまだ覚醒していない為に、自分の敵対者も理解者も関係なく、自分に関わった
周囲の者達を無差別に殺傷してしまうが、「ミサと関わった者たちは死ぬ運命なのだ」

 この作品では、ラストシーンで一般庶民が、虚ろな表情で何かに取りつかれたように
「エコエコアザラク」と呪文を唱えるシーンが印象的である。もし呪文を唱える事で、魔術が
使えて自分の願望が叶えられ、日頃の恨み辛みが晴らされてストレスや不満の元凶が
消滅されたら、こんなに素晴らしい事はないのだ。老若男女を問わず、精神を病んでいる
人が大勢居る現代社会の病巣の一端を垣間見る事が出来る。

 過去の劇場版の他の作品とテレビ版では、魔術を駆使する少女が黒魔術に絡んだ、邪悪
な物と闘うという展開が主体なのだが、この第4作では、そのような方向ではなく異色な内容
となっている。この作品では黒魔術を駆使する存在や、闇の世界の住人との戦いの話では
なくて、人間の心の中に潜んでいるが、通常は表面に出てこない「邪悪で醜い心」との戦い
である。そのような「心」は、大勢の人の意識の中に存在し、何かの拍子に出てきて一気に
爆発する事があると警告が発せられているのだ。そういう視点で見れば秀作として評価される。
 遠藤憲一がワイドショースタッフとして好演している。

★・点数・100点
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