スターシップトゥルーパーズ [宇宙]

スターシップトゥルーパーズ

監督 ポール・バーホーベン  脚本 エド・ニューマイヤー

原作 「宇宙の戦士」(1959年)ロバート・A・ハインライン

出演
ジョニーリコ (キャスパー・ヴァン・ディーン) 
ディズ(ディナ・メイヤー)
カルメン・イパネス (デニス・リチャーズ)
エース・リビー (ジェイク・ビシー)
カール・ジェンキンス (ニール・パトリック・ハリス)
サンダー・バルカロウ (パトリック・マルドーン)
ジーン・ラズチャック (マイケル・アイアンサイド)
ズィム軍曹 (クランシー・ブラウン)
デラディエ艦長 (ブレンダ・ストロング)


◆・ストーリー

 軍事政権の支配下にある未来社会では、地球連邦軍に志願し任期を終了すれば
市民権が保障された。ハイスクールを卒業した「リコ」(キャスパー・ヴァン・ディーン)は、
市民権を得る為に両親の反対を押し切り、親友たちと入隊する。
 訓練期間中に、高度に知能が発達した昆虫のエイリアン「バグ」の攻撃で
ブエノスアイレスが消滅したのをきっかけに、人類との間で本格的な戦争状態に突入する。

 厳しい訓練を乗り越えた「リコ」達、新兵も、敵の本拠地「グレンダス星」の攻撃に参加
するが、敵の戦闘能力を過小評価した連邦軍は大損害をこうむる。
 幾多の戦闘で親友や戦友を失い過酷な経験を積む事で「リコ」は立派な大人に、
そして軍人へと成長していく。


◆・レビュー

 戦争 ⇒ 殺し合い ⇒ 人の死、といった恐怖に直面した事のない無邪気な
ティーンエイジャー達が、悲壮感や恐怖感など意識することなく、まるでスポーツや
アルバイトでもやるような感覚で入隊していく事に「平和ボケ」と「情報操作と思想教育」
の恐ろしさを感じるが、彼らにとってはそれが日常の延長なのだ。

 リコとカルメン(デニス・リチャーズ)の相思相愛のカップル。
そしてリコに想いを寄せるディズ(ディナ・メイヤー)さらにカルメンを巡る恋敵サンダ
(パトリック・マルドーン)との争い、何処にでもありそうな青春群像から、同世代の
新兵達との交遊と仲間意識の形成へと、スタンダードな青春物のようなストーリーが
展開される。
 彼ら、普通の若者達が戦場に駆り出され、戦闘と戦友の死に直面する事により、
ごく短期間で一人の人間として、また軍人として成長していき、精神的に強く頼りに
なる存在になっていく。戦争を肯定的に捉えれば、そのような利点があるのを否定は
出来ない。そういう点を見事に描いていると評価したい。

 それにしてもアンバランスな描写が目立つのが愉快だ。
未来社会なのに、新兵訓練の様子は現代の海兵隊と似たような雰囲気だし、
ミスをした罰の連隊内処分が、ムチ打ち10回とは、随分と野蛮な社会ではないか。
ここはアラブか?男女一緒のシャワーが唯一、好感が持てるのが救いだ。
 
 まるで第一次大戦の初期を思わせるような前近代的な戦術と戦闘形態が凄い。
大型の宇宙船を操り、わざわざ敵の本拠地の星まで乗り込める科学力があるのに、
戦前の日本陸軍も真っ青の人命軽視の白兵戦を行うのに相当な違和感を感じる。
戦闘ロボットもレーザー光線も無く、歩兵が徒歩で弾丸で戦う始末。戦闘車両はないのか!
この辺りは原作を変更しても良かったのではないか。

 また「死んだ虫だけが良い虫だ」というのは「死んだドイツ人だけが良いドイツ人だ」と
同じフレーズであり、ナチス批判の文句は色々と応用が出来そうだ。

 この未来社会においても、アメフトが隆盛を極めている状況設定が、いかにも独善的で
自分本位に考えるアメリカらしさを感じる。なにしろブエノスアイレス・スポーツクラブで
行われるアメフトのゲームが「タイガース対ジャイアンツ」で、リオや東京にもプロチーム
があるという設定の凄さには、ただ唖然とするばかりだ。
 荒唐無稽というのは、このような事例を言うのであろう。
現実は、アルゼンチンやブラジル、日本で、アメフトが人気スポーツになるよりも前に、
アメリカがサッカー王国になる可能性の方が、はるかに高いのではなかろうか。
本当にアメリカ人の自己中心的な世界観が強く出ていると思う。
70年代に「アメフト・プロレス・ローラーゲーム」をミックスしたような「ローラーボール」を
映画の作品の中の話ではなくて、未来世界で人気ナンバー1のスポーツになっている
だろうと公言するくらいだから、まさに井の中の蛙状態。たかが映画の世界とはいえ、
もう少し世界中の人々のスポーツ普及度と嗜好の学習が必要である。

 高校教師から機動歩兵の連隊長へと、頼れる指揮官を演じる、マイケル・アイアンサイドは
、まさに当り役。また、007シリーズ「ワールド・イズ・ノット・イナフ」では美人科学者役を
演じ、ここでは、リコのガールフレンド「カルメン」になる(デニス・リチャーズ)の初々しさと
天真爛漫な笑顔と可愛らしさもまた印象的で、デラディエ艦長役の「ブレンダ・ストリング」の
熟女の魅力も捨てがたい。

 なお、この作品は、3月にCS放送で放送予定だったのが、3月11日の東日本大震災
により、放送延期になってしまった「都市が丸ごと消滅とか戦闘での大量殺戮のシーン」が
問題と判断されたのかもしれないが、明らかに過剰反応だったと指摘しておく。

★・点数 80点
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