発狂する唇 [悪魔]

発狂する唇 (1999年)

監督 佐々木浩久  脚本 高橋洋

出演
   三輪ひとみ 夏川ひじり  栗林知美  由良宣子  吉村由美 
   下元史朗  阿部寛  大杉連  諏訪太朗 つじしんめい

挿入歌 三輪ひとみ


◆・ストーリー

 兄(鈴木一真)が、少女連続殺人犯の容疑者とされている倉橋家は、マスコミスクラムと
地域住民からの迫害に悩まされていた。次女の里美(三輪ひとみ)は、兄の無実を証明
する為に、怪しげな心霊研究所へ捜査の依頼を行う。しかし女性霊媒師(由良宣子)と
助手(下元史朗)を軸に刑事(諏訪太朗)まで巻き込み、家の中は大混乱となっていく。

 混乱から脱出した家族3人(母親・吉村由美・長女・夏川ひじり)が、マスコミと刑事
から逃れ、手掛かりを求めて兄の待つ山中の一軒家に行くと、不思議な事に、
3人とも夢の中で見た事があるという。実は3人とも事件と関わっていたのだ。
家族の味方となるFBIを名乗る謎の組織のグループ(「成本」阿部寛・「ルーシー」栗林知美)
も加わり、殺された少女の遺族達と山中で壮絶な殺し合いが始まる。

◆・レビュー

 猟奇殺人犯と思われていた兄が、実は唯一正常な人間だった。
冒頭部分で被害者と思われて同情を呼ぶような描写が続くが、実はキチガイ家族による、
狂気と変態の世界が展開するのが、救いようがないほどの悲惨さに華を添える。
一連の異様な行動だが、実は倫理や道徳に束縛されずに、本能をむき出しにした姿とも
思える。しかもそれは家族だけでなく、登場人物の大半に共通しているのだ。ただし、
自宅内に侵入してきたマスコミ関係者達を次々と殺すシーンは誠に痛快である。
常識や社会規範や慣習を守って、日常生活を営んできた一般人が僅かのきっかけから、
老若男女を問わず、欲望を求めて行動する時の、人間の浅はかさ、恐ろしさが当たり前の
ように展開される。つまり、家族以外の登場人物にも狂気と変態の要素が充満しているのだ。
劇中では、常軌を逸したように見える行動と思考こそが日常であり、正常と思われる物が
非日常のように感じてしまう。

 極限状態に置かれた人達が全員で狂気に走ってしまうのだが、そのような状況下
では、何処でも起こりうる可能性があるのだ。やがて全員が山中で無残な死に様を晒し、
神も仏も無縁の屠殺場と化してラストとなる。この一連の狂気の行動が神を迎える為の
儀式であるかのように示唆して謎を秘めたまま物語は終わる。

キチガイとキチガイによるキチガイの為の作品と言っても過言ではない。 

 まるで新東宝の石井輝男監督作品を連想させるようなエログロ的表現が、たっぷりと
詰まったストーリーで、他のホラー作品とは一線を画す独特の世界観の中で猟奇的で
刺激が強すぎる為に、地上波では放送不可能であろう。ホラー映画ファンとしては、
必見の作品であり、秀作として記憶しておこう。

 人の弱みに付け込み、家庭を崩壊させて乗っ取る霊媒師の助手「当麻」に、かつての
ピンク映画で活躍した下元史朗が、マスコミを意識してヒーローのように振舞いレイプする
刑事役を、今やホラー作品で貴重な脇役を演じて華を添えている諏訪太朗が見事に演じて
オドロオドロしさを出す効果に貢献している。また、大佐役の大杉連、阿部寛、栗林知美、
3人のシリアスとは対照的なコミカルなセリフと演技も十分に楽しめるので見逃せない。

 特筆すべきは「三輪ひとみ」である。
三輪ひとみがここまでやるかと、ハラハラ、ドキドキするほどのメチャクチャな汚れ役を
演じている。ゲロ吐きなど序の口、義理の兄との近親相姦、妊娠、アナルSEX、二穴同時攻め
、死んだ刑事との死姦、これで浣腸&スカトロシーンがあったらもっと凄かった。
ファンならば、「頼むからやめてほしい」「もっと細部まで見たかった」といった両極端の声が
上がるのではなかろうか。家族の中で唯一正常な神経を持っていると思われていたが、実は、
このキチガイ家族と狂気の世界の中心人物で、霊能力があり、念力で人を殺す能力を持って
いるという設定の役を熱演し、この作品で「日本映画プロフェッショナル大賞新人奨励賞」を
受賞している。

「D坂殺人事件」⇒「ねらわれた学園」(テレビ版)⇒「エコエコアザラクⅢ(劇場版)」
⇒「サイバー少女テロメア」⇒「生霊」と、デビュー以来、ホラー&SF 作品中心に出演して
演技を磨き、「菅野美穂」「佐伯日菜子」と並び、ジャパニーズホラーを代表する女優の一人
である。マニアックホラークイーンか脇役ホラークイーンの称号が相応しいかもしれない。

 挿入歌を、少し鼻にかかり、こもった優しい歌声で歌うが、ファンにとっては貴重な
おまけの付録かお宝か?このシーンのロケは「江戸川区葛西の総合レクリェーション公園・
「フラワーガーデン」と、隣接した「富士公園」の2か所のようだ。季節の花に囲まれた中に
三輪ひとみが、たたずみ歌う。なかなか良い光景だったと思う。

★・点数100点
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