恐怖劇場アンバランス 第7話「夜が明けたら」 [恐怖劇場アンバランス]

◆・第7話「夜が明けたら」
 
監督 黒木和夫  脚本 滝沢真里
出演 西村晃  夏珠美  花沢徳衛 根岸一正

挿入歌「夜が明けたら」浅川マキ


◆・ストーリー

 平凡だが幸せに暮らしていた初老の父(西村晃)と娘(夏珠美)だったが、街中で、
チンピラ(根岸一正)に絡まれる。娘の貞操と自身の身の危険を感じた父は持っていた
ハサミで刺してしまい、犯罪者として刑務所に服役する不合理に見舞われる。
やがて刑期を終えて復帰した父親は、理解しがたい事に自分達を不幸にしたチンピラ達に
遊ぶ金を渡していたのだ。それは謝罪の意味なのか、それとも別の意味があるのだろうか。

◆・レビュー

 21世紀の現在の視点で、この回を観ると実に理不尽な展開であり、また30年以上前の
社会の価値観に強い違和感を感じるはずだ。「恐怖劇場アンバランス」が制作された当時の
社会状況を振り返ってみよう。60年代、70年代前半の頃は、このような異常な法解釈と審判
が、正論や常識として堂々とまかり通っていたのだ。それは「被害者よりも加害者の権利や
人権が過剰に保護されていた事」「状況や展開に関係なく暴力を行使して相手を負傷させた
方が、一方的に悪く正当防衛が適用されない」という完全に狂った社会だった。

 現在の視点で観れば判る通り、「過剰正当防衛どころか、当たり前の正義の行動である」
相手の3人のチンピラは、本来ならば社会のクズとして抹殺されるべきであろう。あの状況では、
もしかしたら娘はレイプされたかもしれないし、父親は良くて半殺し、最悪、撲殺されただろう。
60歳前後の弱そうな父親と娘に対して3人の若者が威嚇し恐怖を与えているのだ。
 しかも、また大勢のやじ馬が周りを取り囲んで観ているだけだ。だれも警察に通報しようと
しないし、おそらく裁判ではまともな証人にもならなかったのであろう。現在の若者達が観たら
極めて異様な光景に映るだろうが、これは架空のドラマではなくて、数十年前の日本人と社会
の実像である。あのやじ馬どもは、平凡で善良な庶民に見えるが、実際はエセ平和主義者で
あり偽善者なのだ。あの状況からして、持っていたハサミで刺してケガをさせたから悪いのだ
という解釈は誰も納得できないだろう。本当の被害者が防衛行動に出た為に、加害者に仕立て
られてしまうのだ。不愉快かつ残念な事に、この当時は、そういう社会だったのが現実である。

 出所後、自分と娘を不幸にしたチンピラに金をあげて養うような生活を続けるのはなぜか疑問を
感じる人も居ると思うが、同じチンピラを使って傍観者だったやじ馬達に代表される平和的な庶民
に、自分と同様の立場を体験させてやろうという考えを間接的に実践しているのだ。
 そう、彼は偽善的な世間と一般大衆と理不尽な裁判所と法律に対して復讐を行っている。
このような社会を構成し、容認し、支えているのは庶民なのだから、復讐の対象とされるのは
必然なのである。【今回の最大のポイントはこの事だ。】

 日本の戦後民主主義と反戦平和精神が、民主主義をもたらしたアメリカとは大きく異なり、
日本独自の歪んだ精神で発達した行き着く先の狂った社会を実に適切に表現している。
実はこの第7話は、怪奇大作戦25話と同様のアッピールが行われているのが判るだろうか。
キチガイによる法曹界とメディア支配が続く事で、どのような異常な社会と人間が出現するかを
具体的に指摘して改善を訴えているのだ。今でも、人権派弁護士と称して、死刑反対を唱えて
残虐非道の極悪人を弁護したり、飲酒運転による殺人犯や死刑にされるべき麻薬常習者らへの
異常な刑の軽さなどがクローズアップされたのは記憶に新しいし、警察官が銃を発砲すると、
目くじらを立てる安全ボケマスコミや、キチガイ文化人が大手を振って活動している。

 未成年犯罪者への厳しいが常識的な対応、残虐犯の時効撤廃、死刑を廃止するならば
終身刑を作る。飲酒運転の罰則を厳しくする。これらは全て、現在の一般大衆の心情に基づく
自発的な行動と要望から出されたものである。
 その勝利の一つが「山口県光市の母子強姦惨殺事件」の、ウルトラ悪魔の死刑確定である。
「被害者よりも加害者の権利を尊重してきた」安全ボケ左翼政党や、キチガイ文化人や、
人権派弁護士や時代錯誤マスコミや裁判官が、加害者を一生懸命擁護してきたのは
「歴史的事実である」
 
 これは非常に重要な事なのだが、画面に登場している、あのやじ馬どもに相当する連中は、
現在60代半ばから80代前半の年齢で、今も日本に住んでおり、あのような価値観や人生観
を周囲に主張している事を絶対に忘れてはいけない。

滝沢真理の脚本が素晴らしく、当時の異常な法解釈を適切に表現している秀逸な内容で、
第1話「木乃伊の恋」 第4話「仮面の墓場」 第10話「サラリーマンの勲章」と並び、
シリーズの中の優秀作品の一つとして記憶しておこう。文句無しの100点満点の評価である。

★・点数100点
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