宇宙戦争(リメイク版) [宇宙]

宇宙戦争(リメイク版)(2005年)

監督 スティーヴン・スピルバーグ
脚本 ジョシュ・フリードマン デヴィッド・コープ  原作 HG・ウエルズ

出演 トム・クルーズ  ミランダ・オットー  ジャスティン・チャットウン
   ダコタ・ファ二ング  ライム・ロビンス

◆・ストーリー

 世界各地で磁気嵐が発生し、上空に奇怪な雲と嵐、カミナリが発生する。
落雷した場所から、観た事も無いマシーンが現れて、無差別に破壊と殺戮を始めた。
真っ先に異変に気付いた港湾労働者のレイ(トム・クルーズ)は、運よく、子供達を連れて
街から脱出する事に成功したが、フェリー乗り場、田舎の一軒家と次第に追いつめられ、
戦場で息子のロビー(ジャスティン・チャットウン)と別れ、ついに、宇宙人のマシーンに
娘のレイチェル(ダコタ・ファ二ング)と共に掴まってしまう。
◆・レビュー

 旧作のリバイバルだが、他の作品のリバイバルに有りがちなように、これまた定番通りの
失敗作である。原作を部分的には再現しているカ所もあるが、原作が発表された当時と現在の
科学の発展を考慮して、全く別の物語にした方が良かったのではないか。
 原作に沿って3本足のマシーンを登場させたばかりか、主人公が宇宙人と戦う事よりも、
家族を大切にして娘を守る為に逃げ回る事に重点を置いた作品にした事が失敗の要因と思われる。

 ここで登場するマシーンは人類が生まれる&ずっと前から地中深く埋まっており、
雷に乗じて、火星人はカプセルに乗って地表に降下して来たという設定になっているのだが、
この設定に相当な無理がある。つまり、相当な大昔にマシーンだけ送り込む優れた科学技術を
すでに保有していた事と、「超年代物の古いマシーン」だという事が判る。
 しかも地球の天変地異の影響も受けずに、人類の地中探査等によっても発見されなかった
というのだから驚きではないか。
 更に驚くべきは、彼らがカプセルに乗って本格的な地球侵略に来るまでの長期間、マシーンに
関する科学技術や兵器体系の発達や改良がまるで無かったという事だ。
本当に地球が欲しいならば、2つの世界大戦で地球人類の兵器や科学が発達したり、海洋や
大気の汚染等、自然破壊が進行する前の段階、例えば、産業革命以前に侵略して来た方が、
もっと楽に戦って、綺麗な地球を手に入れる事が可能だったはずだ。

この宇宙人は「のんびり屋」なのか、マヌケなのか、それとも時間の概念が無いのか。
実に不思議な生命体である。マシーンを大量に送り込む時点で、地球の環境は調査済みだろうし
、その後も人類の科学や工業の進化や、地球環境の変化に関して、偵察や探査活動を続けて
いない等とは、戦略上全くあり得ない事だ。

 そして自分の些細な言い分や我がままを通すために、狭い車内で金切り声を上げてわめく
ガキ(ダコタ・ファ二ング)がウルサイ。観ているこちらが映画の中に入っていき、
「黙れ!やかましい!」と言って張り倒したくなってくる。
すでに【他人の車を横取りして乗る】時点で、周囲の町の様子や大人たちの態度や、
異常な大気現象を観れば、10歳の子供でも、これは何か大変な事が起こっているのが判り、
強い不安や恐怖を感じるはずではないか。この生意気なガキが宇宙人によって、血祭りに
上げられなかったのが非常に残念である。

 オリジナル版は「戦う勇敢な科学者」が主役だったのに対して、このリメイク版では
「港湾労働者で妻と離婚した逃げるダメオヤジ」が主役となっているが、いつもは格好いい
トム・クルーズが、まるで正反対の役柄を見事に好演しているのだけが収穫といえよう。

 絶望的な状況の中、苦難を乗り越えて主役の家族全員は無事生き伸びるという、
まさに御都合主義の極致と言うべき、アメリカのSFやパニック映画で見られる典型的な
ストーリー展開の妄想活劇になっている。

この作品の監督がスピルバーグとは到底信じられない駄作として記録しておこう。
なんで、こんなの撮っちゃったんだろう。

★・点数10点(トム・クルーズの熱演が無ければ0点どころかマイナスである)

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