血を吸う薔薇 [吸血鬼]

「血を吸う薔薇」(東宝)

監督 山本迪夫  脚本 小川英  武末勝

出演
岸田森 黒沢年男 田中邦衛 望月真理子 竹井みどり 伊藤雄一郎

◆・ストーリー

 聖隷学園に就任した白木(黒沢年男)は、初対面の現学長(岸田森)
から次期学長として招いたと伝えられる。
 その夜、早くも女吸血鬼のアタックの洗礼を受ける事になるが、自分の身の
危険を顧みず、教え子の失踪と死亡事件の徹底究明に取り組む。
校医の下村(田中邦衛)から、古くから村に伝わる吸血鬼伝説を聞かされ、
また精神病院に入院中の前任の学長候補の話から、学長と夫人は古来の吸血鬼
が、代々、人の身体を乗っ取り移り住んでいる仮の姿である疑いを持ち、
命がけの戦いを挑む。
◆レビュー

 日本の風土に「ドラキュラ」の存在という設定には違和感を感じる人も
居るだろう。しかし、村に古くから伝わるドラキュラ伝説の説明によって
納得するはず。拷問にあった西洋人宣教師が改宗し絶望した中から、
生きていく為に吸血鬼に変身したという設定になっている。

 ドラキュラに扮した岸田森の熱演(怪演?)が光る。
前作「血を吸う眼」以上にドラキュラらしさを出して輝いているのだ。
「自分を吸血鬼と信じているただのキチガイではなく正真正銘の吸血鬼なのだ」
その吸血鬼ぶりは、決して西洋の本家に負けてはいないと思える出色の出来だ

 人間の姿をしている時は女子大の学園長という設定が良い。
女子大生が大勢いる学園とは、ドラキュラにとっては、ご馳走の宝庫とも
いえるのではなかろうか。岸田森のクールな演技とドラキュラの冷酷さが上手く
マッチしている。学園長からドラキュラにと変身しても、どちらにも見事に成り
きってしまう演技力、表現力は本当に素晴らしい。

 ドラキュラの子分として設定されている「変っている」というよりは
「気味が悪い、フランス文学の吉井教授」の存在が愉快だ。
詩的ではあるが意味不明のフランス文学的な表現を唱える言動と操り人形の
ような動作が「子分」らしくて良い。この辺は外国の本家ドラキュラの手下よりも
存在感のある役となっている。
 これも「池袋文芸坐」で観たのだが、終盤の格闘シーンで岸田森が黒沢年男の
顔面に爪を立てるシーンでは、
「お~鉄の爪だ!!!」(プロレスファンならお馴染み)という声と、
それに同調した笑い声があちこちから上がって、怖さが半減してしまった。
この作品を作った時には「鉄の爪」を売り物にするプロレスラーは居なかったのだが、
このようなシーンはコミカルなものになってしまうのはよくある事だ。


まだ若く初々しい「竹井みどり」が最初に犠牲になる村娘の役で出演している。

★・点数 90点

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