ウルトラQ・第28話「あけてくれ!」 [ウルトラQ]

第28話「あけてくれ!」

監督 円谷一 脚本 小山内美江子  特殊技術 川上景司
出演 佐原健二 桜井浩子 西條康彦  江川宇礼雄
ゲスト出演 柳谷寛 天本英世 東郷晴子 東静子 石田茂樹
       佐田豊 森今日子

◆・ストーリー
 
 万城目淳と由利子は休暇を利用して二人でドライブ中に路上で倒れている男(柳谷寛)を
発見し保護したが、男は踏切で通過する電車を観たとたん、狂ったように叫びだした。
調査の結果、SF作家の友野健二(天本英世)が絡んでいる事が判明する。


◆・レビュー


 いつの世にも社会の喧騒や世間のしがらみから逃れて、精神的に自由になりたいと願う
人々が居る。その願いは蒸発する事で叶うのかもしれないが、それを社会生活不適格者と
批判するのは安直すぎるし問題の本質を突いていない。この物語では、家族からも会社
からも疎外、迫害されているサラリーマンの哀れな日常生活が描かれているが、けっして
他人事ではない。もし別の次元に時間と空間を超越した世界が拡がり、自分が行ける
チャンスがあると知ったなら、どうするだろうか?
 「蒸発する」事が、こういう形で世間の目から消えて、違う世界で周囲から迫害されず
束縛されず自由に生きていけるのならば、希望者が続出するかもしれない。

 ウルトラQが制作された1960年代は折しも高度経済成長期の真っ只中で、働き蜂とか
猛烈サラリーマンや会社人間などと称されたように、「仕事が生きがい」「人生は働く為にある」
という考え方が一般的で、更には物欲や金銭欲が人々を支配し、ゆとりや癒しなどとは全く
無縁の人生観や職業観が支配していた時代背景がある。当時の社会状況や風潮からは、
サラリーマンの過労によるノイローゼやうつ病などの対策は全く顧みられず、社会の脱落者、
人生の落後者のような酷い扱いだったのだ。

 この回は、本放送では放映されずに、再放送で放映されたという。
確かに子供向けの内容ではなく子供には理解できないと思われるからその判断は正しいと思う。
大人向けの話になっている為、今見ても面白い作品になっている。
特に柳谷寛が、うだつの上がらないサラリーマンを好演しているのが印象的で、
第19話「2020年の挑戦」での宇田川刑事役よりも、更にパワーアップして嵌まっており、
持って行き場のない怒りと無念さを上手く表現し、鬼気迫るものがある。
身につまされて他人事とは思えない人も居るのではないか。

 残念なのが、電車がなぜ空中に浮かび飛ぶのかという説明が希薄な為に、今ひとつパンチに
掛けた内容になっている事か。

◆・点数90点

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