恐怖劇場アンバランス 第1話 「木乃伊の恋」 [恐怖劇場アンバランス]

◆・第1話「木乃伊の恋」

監督 鈴木清順  脚本 田中陽造  原作 円地文子

出演 大和屋竺 渡辺美佐 川津祐介 浜村純 

◆・ストーリー

 地中から鐘が鳴っている音が聞こえた正次(川津祐介)は、地面を掘ってみると、
入定してミイラになった名僧が出てきた。蘇ったミイラは入定の定助(大和屋竺)
「生き仏の蘇り」と思われたのが、働かず、食欲と性欲だけが盛んな色キチガイと化していた。
若い未亡人との間でSEX三昧を繰り広げた挙句に子供を作ったが、産まれてきたのは、
2人そっくりの小さい男女の淫乱極まりない菩薩だった。

 この物語は、江戸文学書「春雨物語」の話で、布川教授(浜村純)から口述筆記していた
教え子(渡辺美佐)は、廃墟の跡地で不思議な体験をする事になる。

◆・レビュー

 春雨物語の中の、入定を果たした高僧の性への執念を巡るコミカルな話だ。
田中陽造の脚本を鈴木清順が、前半部分は向学心の高い川津祐介を軸にしてコミカルタッチで
、後半は未亡人の渡辺美佐子を軸にシリアスな演出で表現している。

 入定(にゅうじょう)それは禅定して心を一所に定めて人間的な欲望を止める事だという。
しかし、ミイラから蘇った時、徳の高い僧は、ただ救いようのない色キチガイになっていたのだ。
そして「前の世界で果たせなかったSEXへの執着を一人の女の身体で果たした」
そう、性欲とSEXへの願望だけが蘇りへの執念と成就だった事になる。

 高僧の身分で、立派でありがたいお経を唱えて、教えを説いて、我欲を抑えた生活と修行を
行い、更には入定しても、それは人間本来の生き方に反するという事を意味しているのだ。
無理やり欲望を抑えつけて辛抱すると、やがて大きな反動が来る。
その行き着く先が「エロ菩薩」の大量発生というおぞましい結果を招いた事になる。

 そして、この話を選んで口述筆記させる布川教授もまた、自身の教え子に対するSEXへの
執着で頭の中が一杯だったに違いない。教授自身が定助のように蘇り「性に執着して」
想いを遂げたかったのであろう。これをただのエロジジイだと決めつけて良いのだろうか。
実は人間は、地位や知徳、職業等に関係なく、誰でも定助になる可能性を秘めていると
解釈出来るのではなかろうか。

 教え子が、廃墟の跡で愛し合ったのが、空襲で亡くなった夫の霊なのか、死の間際に想いを
遂げようという布川教授の生霊だったのか、あるいは二人が一体化したのか、真相は明らか
にはならないが、教え子もまた、実は性への願望を心に秘めており、そうなる結果を期待して
いたのかもしれない。

人間の性について考えさせられるというよりも、性欲=「生」生きる事への欲望であり、
希望に繋がると分析するだけで良い。

★・点数100点

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