恐怖劇場アンバランス 第2話 「死を予告する女」 [恐怖劇場アンバランス]

◆・第2話 「死を予告する女」

監督 藤田敏八   脚本 小山内美江子

出演 蜷川幸雄  財津一郎 荒砂ゆき  藤田桂子  楠有子 名古屋章


◆・ストーリー

 スタジオでレコーディング中の作曲家・坂巻(蜷川幸雄)は、内妻(荒砂ゆき)から、
娘が病気で危険な状態との電話を受けるが無視する。そして帰宅中のタクシーで
輸送中の毒蛇が盗まれる事件が発生した事を知る。
 帰宅すると、室内に見知らぬ女性(楠有子)がおり「今夜の12時13分に死ぬ」
「蛇にあなたは殺される」と死亡時刻を予告するのだった。その女性は、坂巻の行く先々に
先回りしているかのように姿を現す。行きつけのスナックでは新人の「伊沢まり子」を名乗り
、二軒目のスナックでは歌手の卵「吉川ひろみ」として作詞家(財津一郎)が入れ込んでいた。

 仕事仲間達(名古屋章)と姿を消した伊沢まり子の住所を辿ってみると、そこは墓場だった。
自宅に戻ると、死亡時刻が迫る中、内縁関係の女性が現れて
「子供を助ける為には、私の命でもなんでも、とってください」と祈った事を打ち明ける。

◆・レビュー

 自分が成功したり、有名人になって地位と名声を得るようになり周囲からチヤホヤされると、
下積み時代の公にしたくない過去を清算したいとか、更にステップアップして華やかな世界
に飛躍していけそうな弊害は邪魔になると感じる事がある。多くの場合、向上心というよりも
、名誉欲や自尊心の強さから来る場合が多い。芸能界や政界や学会、その他、あらゆる
ジャンルでよくある話だ。その時に、その人の人間性が問われる。

 一人娘の命を何とも思わず、喜怒哀楽を共にしたであろう恩のある内妻を邪魔者扱いする。
自分を支えて苦楽を共にしてきた大切な人なのに、平気で踏み台にして仇で返すのだ。
生命の危機にある純粋無垢な娘を助ける為の代償として、身勝手な欲望と権力に取りつか
れてしまった「男の魂」が「死神」に召集されるのである。因果応報とはこのような事例を指す。

 しかも、何も知らずに死の世界に旅立つのではなく、死神が現れて死亡時刻を告知される。
自分の死ぬ時間が判るのは、ある意味、親切かもしれないが、残された時間は少なく、
その告知には疑心暗鬼なのだから、「告知されても、死ぬ前にやりたい事をやって思い残す
事なく、満足していく時間もチャンスも与えられずに」死神に追われて刻一刻と迫る恐怖の中
で死んで行くのだ。まさに天罰といえよう。

 庶民の立場から見たら、この身勝手な男に対して、全く同情心も哀悼の意も感じない。
逆に、どうやって死んで行くのかを期待し楽しみたいと思ってしまう。したがって恐怖感は共有
しないし、恐れ慄く姿には快感さえ感じるのだ。

 坂巻は、周囲から先生と呼ばれチヤホヤされて、しかも色っぽい女性の「死神」とSEX出来た
のだから、平均寿命よりも短い生涯でも、通常では有り得ない貴重な人生体験をした事になる。
良い冥土の土産話が出来たのではないかと思うと羨ましい限りだ。

坂巻の役を、今や超有名演出家となったが、まだ役者だった若かりしき頃の蜷川幸雄が熱演
しているのが印象的な作品である。

★・点数90点


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