恐怖劇場アンバランス 第9話「死体置き場(モルグ)の殺人者」 [恐怖劇場アンバランス]

◆・第9話「死体置き場(モルグ)の殺人者」

監督 長谷部安春  脚本 山浦弘靖
出演 西尾三枝子  中原早苗  久富惟春 渥美国泰 柳川慶子  野坂昭如


◆・ストーリー

 医学部の助教授の水上(久富惟春)は、不倫相手の助手の小野寺涼子(西尾三枝子)と
運転中にイチャツイていて村田を跳ねて殺してしまう。二人は事故の発覚を恐れ、大学病院
の地下の死体保存室でホルマリン漬けにするが、すぐに水上と涼子の周辺に奇怪な現象が
起こり始める。村田が子供の誕生日の祝いに買ったオルゴールの音が鳴り続け、死んだはずの
男が活動するのだ。水上は追いつめられた挙句、亡霊に驚いて自宅から飛び出してきた涼子を
も車で跳ねて殺してしまうが、置き去りにして逃げてしまう。
そして間もなく、死体保存室には死体に復讐された水上がホルマリン漬けになっていた。


◆・レビュー

 一言で言えば「悪い事をしたら神様が観ていて天罰を下す」という事であろうか。

不倫の果てに非常識な車の運転マナーではねて殺してしまい、死体保存室に隠すとは言語道断、
2人が復讐されても当然で、観ている側にすれば、怨霊に襲われてパニックになる姿を観ても、
恐怖感は感じない。むしろ、この悪党助教授と破廉恥な教え子に対して、どのような神の裁きが
下されて、2人が恐怖にのたうち回るのかを楽しむ気持ちの方が強い。

 ここで展開されているのは、現実の社会にもよくある男女の不倫関係である。
部下の若い女性をとっかえひっかえして不倫関係を続け、何か不祥事が起こると自己保身に必死
となり、倫理道徳など無視、時には法に反する事も行う。男の身勝手かもしれないが、女の方も
男から男へと渡り歩き、時には利用し打算で交際する事もある。
もし、一夫多妻制、あるいは一妻多夫制が公認されたら、正々堂々と男女関係を営める社会になる
かもしれない。

 18歳で日活のニューフェイスのヒロインでデビューした西尾三枝子が20代半ばを過ぎて、
不倫の相手役として良い演技をしている。デビュー当時の青純派で初心な役柄と少女の容姿
からは想像もつかない。日活時代は、青春物からアクション物の起用が多く、テレビドラマ
「サインはV」の第1話で、岡田可愛の死んだ姉の役を演じたのを記憶しているファンも多い
だろう。 
 プレイガール(テレビ東京)にもレギュラーで出演していたが、あまりお色気を出すような
役もシーンもほとんどなかった。【砂の上の植物群(1964年・日活・中平康監督)】では、
ヌードも見せたが、まだ初々しい女子高生の少女役だったので、このような不倫相手役は凄く
新鮮な感じがする。役柄の上の演技とはいえ、一歩も二歩も成長した大人の姿を観せている
のが印象的だ。

 水上の学生時代の同級生の役で、作家の「野坂昭如」がゲスト出演しているが、まだ役者
慣れしていないのか、あの独特の早口での、日常会話というよりもディスカッション調の台詞
棒読みが印象的である。演技力のある役者が揃っている中で、ただ一人異彩を放ちすぎて
いるのが愉快だ。

恐怖劇場アンバランスの中では、ホラー色の強い内容で見応えがある事を記しておく。

★・点数80点
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