怪奇大作戦 第5話「死神の子守唄」 [怪奇大作戦]

●・第5話「死神の子守唄」

監督 実相寺昭雄  脚本 佐々木守  特撮 大木淳

出演  岸田森 勝呂誉 松山省二 原保美 小橋玲子 小林昭二
ゲスト出演 深山ユリ  草野大悟  戸浦六宏 

◆・ストーリー

 助けを求め必死に逃げる女性、しかし銃で撃たれた瞬間に凍りついて殺される
という残酷な事件が3件続けて起きる。三沢は、それが高木京子(深山ユリ)の
歌うヒット曲の歌詞どおりに起きている事に気がつく。
 この連続殺人は、広島で体内被爆した妹の命を救う為に、科学者の兄・
吉野貞夫(草野大悟)が行ったスペクトルG線の人体実験だったのだ。
しかし夢は叶わず、兄は抵抗するが逮捕され、妹は兄の銃で自殺して悲劇は終わる。


◆・レビュー

 事件の背景は複雑な物がある。広島の原爆によって体内被曝した妹と、
その兄の悲しい物語なのだ。もし自分が同じ立場だったらどうするだろう?
悪い事だと判っていても、自分の大切な人を生きながらせる希望があって、
その手段が自分の手中にあるとしたら、最大限の努力を払うのは当然かもしれない。
しかし、人体実験を行い殺人を犯す事で、また新たな悲劇が起こり、さらに怨念が
生まれるのだから、決して許される事ではないのだ。原爆の投下、そして治療目的
とはいえ人体実験による殺人。これでは科学の悪用の連鎖が続くだけではないか。

そんな事までして生きたくないという妹
何としてでも生かしたいと願う兄。

 人間としての倫理感と個人的な願望の葛藤が起きるのが普通の神経だと
思うし、どのような決断を下しても、それに対して他人が介入する事が、
どこまで可能なのか難しい。しかし自分が所属している社会通念や規範が
厳格にある以上、その範囲内で行われるべきと考える。

 高木京子が歌う、暗く物悲しい歌詞とメロディーは印象的だし、この第5話
全体が、そのような雰囲気に包まれている。

 最期に吉野が逮捕されるシーンは、通常の犯罪者を逮捕するようなシーン
とは大きく異なり、警察側の過剰な対応ぶりを強調するような演出で、かなり
の異様さを感じる。機動隊が犯人1人を逮捕するのに周囲を囲んだ状態で、
催涙弾を何発も発射するなどという状況設定は相当に無理があるし、屈強な
機動隊員が数人掛かりで立ち向っているのにあんなに逮捕に手間取るなんて
ありえない。周囲を囲んでいるのだから、身体にしがみついて手錠を掛けて
サッサと完了だし、抵抗したら警棒で叩いてねじ伏せるだけだ。
 
 脚本家の佐々木守の学生時代の全共闘系学生運動での体験が影響していると
いう説があるが、学生運動鎮圧と凶悪犯逮捕を連動させているとしか思えない。
このような形で学生時代の怨念を表現しているとしたなら公私混同である。

★・点数 80点(逮捕のシーンを除けば90点)
nice!(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。