モスラ [怪獣]

モスラ(1961年東宝)

監督 本多猪四郎  脚本 関沢新一  特撮 円谷英二  
原作 中村真一郎 福永武彦 堀田善衛  音楽 古関裕而 
助監督 野長瀬三摩地

出演

フランキー堺 香川京子 小泉博 平田昭彦  ザッピーナッツ 
ジェリー伊藤 志村喬 上原謙 ハロルド・コンウェイ オスマン・ユセフ 

「インファントの娘」 「モスラ」歌・ザ・ピーナッツ(伊藤ユミ・エミ)

◆・ストーリー

 台風で座礁した船の乗員が原水爆実験の島「インファント島」へ流れ着きながら、
放射能の影響もなく生還した。彼らの証言から原住民が居るという情報の確認と汚染の
実態調査の為に日本とロリシカ共和国による合同調査団が組織される。
 島でネルソン(ジェリー伊藤)を長とする調査団は双子の小美人(ザッピーナツ)を
発見したが、後日、島を訪れたネルソンは、彼女達を捕獲、誘拐して反対を押し切り
見世物興行を行うのだった。
 間もなく島の守護神である蛾の化け物「モスラ」が彼女達を取り返すために日本へ
上陸し東京はパニックになる。モスラは各種兵器による攻撃をものともせずに東京タワーに
繭を作り成虫に孵化して、連れ去られた小美人を追ってロリシカ共和国へ向かう。


◆・レビュー

 ザッピーナッツの歌を聴き画像を見るだけでも、この作品を観る価値がある。
この配役は見事と言うしかない。
怪獣映画に普通のアイドルとは違い、歌唱力のある双子の美人歌手の起用。
現在では到底考えられないと思うが、これは当時の怪獣映画が大人向けの
真面目な作品として制作された背景があるのではないだろうか。
笑えるというか唖然とするのが、ロリシカ共和国から来た外国人が、同国人
同士なのに日本語で会話するシーンだ。実に愉快ではないか。ある意味、
観てる人には親切なのだが、ロリシカ語なんて誰も知らないから適当に喋って
、字幕にしとけば良かったのではないか。そもそもロリシカ共和国という国名が
、ロシアの【ロ】と【シ】・アメリカの【リ】と【カ】を組み合わせた安易な名前だと
誰でも判るのだから適当でも構わないと思う。
 またニューカーク市の住民役のエキストラの外人さん、ご苦労さんと言いたく
なるくらい、皆、真面目に演技しているのが印象的で、今頃、あの人達は
「若い頃、日本で怪獣映画に出たよ!」なんて孫に自慢しているのだろうか。

 そして不良外国人の役をやらせたら天下一品のジェリー伊藤、「悪徳ブローカー」役が
本当にハマり役で、貴重な人材だったのではないかと思う。この映画に出演した当時
から、日本での生活が長いのに、その後も日本語の会話力がほとんど進歩しなかった
らしいのだが、これだけ喋れれば十分でしょう。
「故ロイ・ジェームス」みたいに、日本人よりも上手く日本語を喋られると外人役で起用
して良いのかな~という感じを持つのが日本人なのだから。

 モスラが登場して東京目指して進み、東京タワーに繭を作るシーンに象徴されるよう
に、実写とアニメの合成技術の妙を十二分に観る事が出来るし、東宝お得意のミニチュア
セットとのコラボレーションも楽しめるのではないか。
特に小美人が登場するシーンは幻想的な映像と神秘的な雰囲気が観る者に伝わって来る。

 なお捜索活動に向かった海上保安庁の巡視船とヘリコプターは明らかにロリシカ共和国
の領海と領空を侵犯している。インファント島は「ポリネシア海域」にあるという設定なのに、
なぜ海上保安庁の巡視船が、そしてヘリが、そのような遠方まで捜索に向かうのか。
ロリシカ共和国の沿岸警備隊もしくは準ずる機関があたるべき任務ではなかろうか。
こういう点が東宝特撮映画のご都合主義のなせる技といえよう。

 フランキー堺と香川京子の組み合わせのキャスティングもピッタリはまっている。
好感度の高い熱血漢やカッコいいイケメンではなく、一見トロそうだが正義感の強い新聞記者
の役が、フランキー堺の持っている庶民的な雰囲気と上手くマッチしているのだが、調査船に
密航したのがバレテしまい、臨時の警備兵という設定もまたすごい。実弾の射撃を経験して
無いはずの新聞記者に銃を持たせるのだが、調査隊の荷担ぎ担当の方が相応しいと思う。

注目すべき点は「モスラには言葉は判りません。私達を島に連れ戻す本能しかありません」
というザッピーナッツの言葉である。そう、モスラは人間の言葉が判らないという設定がされて
おり、その通りにストーリーが展開している。このまま人間の味方ではなくて島の守り神のまま
でいた方が良かったのだ。

 ウルトラQ作品で、ガラモン・ラゴン・ぺギラ・スダールなどの登場する回を監督した
「野長瀬三摩地」が助監督として参加しているのを記憶しておきたい。

★・点数 90点

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